イタリア・トスカーナ州にあるエルバ島は、美しいビーチやワインディングが取り巻く、カーエンスージアストにとって天国のような場所。そんなエルバ島で5月の週末、フェラーリ456GT”だけ”のミーティングが開催された。
文& 写真●越湖信一
エルバ島はイタリア・トスカーナ州リヴォルノに属し、ピオンビーノ港からフェリーで1時間ほどの位置にある。美しいビーチと島を取り巻くアップダウンとワインディングが続くドライビングコースは、カーエンスージアストの天国でもある。
さて、今回は5月の週末をこのエルバ島で楽しむべく、熱烈なファンがヨーロッパ各国から集まった。そう、フェラーリ456GTだけが参加できる極めてレアなミーティングが開催されるというのだ。そして、本誌で何回も登場してもらっている、456GTを描いた創造主のひとり、ピエトロ・カマルデッラもエルバ島にやってくるというではないか。そうであれば、ちょうどイタリアに滞在中であった筆者としては参加しないわけに行かない。さっそくエルバ島を目指すことにした。
このイベントを主催するのは多くの会員を持つマニアックなウェブサイト『Rosso Italia.it』に集うメンバー達。イタリア語を解す者ならメンバーとして参加可能だ。このウェブを中心としたクラブを統括するのがアレッサンドロ・カソリーノと奥様のデルフィーナ。456GTの熱烈なファンとして、ハードカバー本まで出版してしまうほどだ。
集合場所のポルト・ピオンビーノに到着すると、カラーバリエーションも豊富な456GT”だけ”が連なっている。なかなかお目にかからないシチュエーションだ。
1992年デビューの456GTは、1996年にはBTR製4速トルクコンバーター式オートマチックが追加され、1998年にはマイナーチェンジ。456Mとモデル名が変更された。発売当時の価格は2500 〜2800万円で、8気筒のF355などが1700万円前後であったことを考えれば、かなり高額なモデルであった。初期モデル、オートマチックトランスミッション導入時の中期モデル、そしてMを後期モデルと世代を分類しているようだが、それ以外にも細かい部分で個体ごとに細かな違いがあるのはこの時代のイタリア車らしい。その点、今回集合したモデルは各期をフォローしており、ディテールの観察を楽しむことができた。集合時点ではどれも同じように見えたのだが、しばらくすると目が慣れてきて、これは中期モデルなはずなのに、インテリアのパーツが違うなどという重箱の隅が見えてくるから不思議だ。ちなみにATモデルは1台も参加がなかった。
5473ccで442HP/6250rpm、56kgm/4500rpmという発売当時フェラーリのラインナップの中で最もハイスペックであったF116型V12エンジンであるが、エキゾーストノートは甲高いものではなく、極めてジェントルだ。それに加えて456GTはスタイリングも落ち着いたものであるから、それほど周囲から注目が集まるわけでもないところが面白い。そんな456GTが12台も次々とフェリーに乗り込んでいくのはなかなかに壮観であった。