Ferrari & Dino 308 GTB&GT4「106系308シリーズから”終”の1台を探す」その1

1973 年のディーノ308GT4に始まる、V8エンジンを横置きミッドシップマウントする106 系と呼ばれるモデルたち。今回はオーナー諸氏のご協力を頂き、308GTBのファイバーボディとスチールボディ、ベルトーネ・ボディの308GT4と208GT4という4 台をセレクト。西川 淳にステアリングを委ね、じっくりと味わい直してみることした。果たして4 台から筆者が” 終”の1 台に選んだのはどのモデルか?

我々の世代にとって、106系は永遠のアイドルのようなものだ。

スーパーカーブームの頃、欲しいクルマはBBだった。毎日BBを描いていた。一番上手く描けたモデルだった。長じて社会人になった頃、時代はバブル経済の真っ只中で跳ね馬は夢のまた夢になっていた。一縷の望みを抱いた308GTBもまた跳ねていたのだ。

ところがバブルが弾け、308(106系)が急にこちらサイドへ降りてきた。ディーノも328もBBも急にリアルな存在になった。とはいえ日本で買える最もリーズナブルなフェラーリは308GT4で、ベルトーネ(ガンディーニ)デザインだから不人気だった(今思えば、若い頃はお金もなければ、本質を見極める目もなかった)。あれから30年以上が過ぎた。結局、私は328を購入するつもりでコンタクトを取った西海岸の店で365GT4/BBを購入した。以来、テスタロッサや400i、F355、F430などを乗り継いだ。308にも乗った。グリーンメタリックでインテリアもグリーンレザーという珍しい(だから当時は激安の)GTSi。不人気なインジェクションモデルだったけれど、そのままの状態で持っていればと今も悔やむ1台だ。


とうとう還暦まであと1年。まだ早いと思いつつ、自分にとって最後の跳ね馬に何がふさわしいかを考えるようになった。昔から知っていて、同じ世代感があって、適度にクラシックでかつモダン、免許返納までドライブできるようパワーバランスに優れ、アクセルもクラッチもちゃんと踏めた方がいい。メンテナンスが面倒すぎるのはごめん被る。そうなるとやはり、106系しかないのだ。我々の世代にとって106系は永遠のアイドルのようなもの。BBのような憧れの女優ではなく、同じように齢を重ねて今も元気に”お茶の間”を楽しませる昔のアイドル歌手なのである。

ピニンファリーナかベルトーネか。

ガンディーニ・ファンとしては後者も捨て難い。

106系。その系譜は1973年にデビューした2+2のディーノ308GT4に始まった。1975年にはディーノ246GTの後継というべき308GTがデビュー。このモデルをディーノではなくフェラーリと呼んだこと、つまり跳ね馬エンブレムを使う決断をおそらくはフィアットが主導して下したことが、現在へと至るブランドの大成功を生んだと言っていい。フェラーリの、否、スーパーカーの民主化である。

308GTシリーズはキャブからインジェクション、4バルブ化を経てモダンな完成形というべき328GTシリーズへと進化する。跳ね馬繁栄の基礎を築いたV8横置きミッドは、1990年の348(V8縦置き)シリーズの登場まで実に17年もの長きにわたって生産されることになった。

1965年生まれの私にとって、1973年から1990年までというと8歳から25歳だ。単なる憧れから所有し乗ることへと興味が移る、まさにその年代に現役であったリアリティある跳ね馬が106系ということになる。

さて、どの106系モデルが”終”の跳ね馬に相応しいか。まず大きく分かれるのがキャブレター仕様かインジェクション仕様か、だろう。インジェクションの気やすさは捨て難い。けれども趣味性に欠けることも確か。それにキャブレターなら壊れてもなんとかなりそうだけれど、燃料噴射システムは厄介だ。よって、キャブ。つまり1970年代。

次にピニンファリーナかベルトーネか。人気では圧倒的に前者。ただ、ガンディーニ・ファンとしては後者も捨て難い。このあたりを改めて横並びの比較テストで確かめてみたいのだ。そこで今回オーナー諸氏にご協力頂き、取材へと持ち出したモデルが、308GTBのファイバーボディとスチールボディ、308GT4と208GT4の4台である。もちろんGTSという選択肢もあるが、個人的にタルガトップの半端な開放感に興味がないのでパス。そのほかキャブモデルなら208GTBもあるが日本では”なぜか”レア。その理由は後々説明するとして、結果的に前述した自分の好みによく当てはまる4台となった。ここから人生を締めくくる跳ね馬を見つけようじゃないか。

文●西川 淳

text by Jun Nishikawa

写真●佐藤亮太

photographs by Ryota Sato

取材協力●内野徳昭/キャバリーノ

http://www.cavallino-cars.com/

こちらの閲覧にはfujisanでのメールマガジン登録が必要となります。
下記リンクより登録をお願いします

メールマガジン登録はこちら

また、登録がお済みの方は下記フォームよりログインしてください。
0
今すぐ読む