1973 年のディーノ308GT4に始まる、V8エンジンを横置きミッドシップマウントする106 系と呼ばれるモデルたち。今回はオーナー諸氏のご協力を頂き、308GTBのファイバーボディとスチールボディ、ベルトーネ・ボディの308GT4と208GT4という4 台をセレクト。西川 淳にステアリングを委ね、じっくりと味わい直してみることした。果たして4 台から筆者が” 終”の1 台に選んだのはどのモデルか?
2リッターの方がエンジンの存在感がはっきりと上であることに驚いた
ディーノ308と208、いずれも素晴らしいコンディション。前組の2台の308GTBもそうだったけれど、おそらく今日本で稼働状態にあるベルトーネ・ディーノのなかでトップクラスの状態だろう。なにせ始動から街中、首都高、パーキングまでまるでストレスなく過ごせる。何ならそのまま京都に乗って帰りたいと思ったほどだ。
乗り込めばピニンファリーナの2シーターとは全く違う景色と気分だった。デザインはもちろん、切り取られた景色がまるで異なっている。ワイドなスクリーンには道路とまわりの景色しか映らない。ピニンファリーナのようにフェンダーの峰が見えない。だからか、さほど低い位置に座っているとは思わず、緊張感は皆無。実際に転がしてみれば前輪と脚の位置がシンクロしているので、前の長さなど何も気にしなくていい。これはラク。
308(ホワイト)から試す。スチールボディの308GTBによく似た感覚があった。GT感が強く、高速道路では落ち着いてブレなく進む。安定志向だと言ってもいい。そのくせカーブが連続するような場所では自在な前輪の動きと落ち着いた後輪の駆動で水を得た魚のようにドライバーの意思に応えてくれる。GTであり、スポーツカーであるという点で、308GTBのスチールボディに遜色ないパフォーマンスをみせた。ハンドリング性能もひょっとするとピニンファリーナより引き出しやすく、懐も深い。この組み合わせが最も思い切って攻め込んでいけたからだ。
対して208(ブラウン)は断然にクラシックスポーツカーだ。なんと車体の動きが軽いことか。308が冬服なら208は春か秋。はっきりと薄い羽織り物を着た感覚があった。何よりも最高だったのが2リッターのV8だ。吹け上がりの軽やかさは間違いなく4台中随一。個体差のレベルではない。そもそもそうなのだ。さらに高回転域のサウンドは情緒的で、アクセルオフではキーンというメカニカルノイズが響く。3リッターよりも2リッターの方がエンジンの存在感がはっきりと上であることに驚いた。
ディーノのベストチョイスは間違いなく208だ。キャバリーノの蓮見社長が惚れ込んで日本へたくさん持ち込んだだけのことはある(だから308GTBより見かける)。決勝戦はファイバーの308GTBピニンファリーナか、それともディーノ208GT4ベルトーネか。2台共にガレージへ、と答えたいところだけれど、個人的な最後の跳ね馬候補は躊躇うことなく208GT4であった。
ガンディーニさん万歳!
フロント回りで308GT4と208GT4 の違いは、大きいところでは前者にフォグランプが装着されていること。またバンパー下のグリルも異なり、308 はブラック、208 はシルバーとなり、実車で比較したところ縦スリットの本数が違っていた。エンジンフードのダクトも308 がブラック、208 がシルバーだ。エキゾーストは308 が左右合計4 本、208 が左1 本となり、遮熱版も208 ではメッシュタイプとなっている。
インテリアでは、エクステリアと逆で、メーターパネルが308 はシルバー、208 はブラックとなっている。レザーシートは当時のオプションで、取材車の308 は絶妙なライトブルーを採用。208 のブラウン系のコーディネートといい、イタリアンデザインの面目躍如と言える部分だろう。この2 台はいずれも初期型だが、後期型になるとエアコンの吹き出し口が下側に追加されるなど、細かいところで違いが出てくる。
ベルトーネがデザインしたディーノ/フェラーリは308 /208GT4 のみで、既にベルトーネが存在しないことから、歴史上唯一の存在だ。近年では見直される動きが多く、価格が安い(=不人気)モデルではなくなった。エンブレムはディーノだが、ホイールにはフェラーリの文字が発見できた。
文●西川 淳 text by Jun Nishikawa
写真●佐藤亮太 photographs by Ryota Sato
取材協力●内野徳昭/キャバリーノ
http://www.cavallino-cars.com/