前澤友作さん「僕がフェラーリでレースに出る理由」

実業家として活躍する一方で、多趣味人として様々な分野でその動向が注目される前澤友作さん。クルマ好きとしても知られ、世界の名だたるブランドのハイパーカーを多数所有する。それらのクルマを通じて、夢や希望を創造することを目的とした「前澤友作スーパーカープロジェクト」を2019年に発足。その活動は多岐にわたり、2023年からはモータースポーツにも進出。自身のレーシングチーム「MAEZAWA RACING」を立ち上げ、GTワールドアジア・チャレンジにスポットエントリーした。ドライバーはプロジェクトの中心的役割を担うレーシングドライバーの横溝直輝選手と、ジェントルマンドライバーのピッティ・ブロムバクディ選手、そして前澤さんは監督という立場で挑み、早々に優勝を成し遂げる幸先の良いスタートを切った。


 さらに昨シーズンからは、前澤さん自らがドライバーとして、フェラーリ・チャレンジ・ジャパンシリーズへの参戦をスタート。このシリーズはフェラーリ488チャレンジEVOを使用したワンメイクレースで、欧州・イギリス・アメリカといった場所でも開催されている人気カテゴリーだ。日本でも毎戦30台近くがエントリーしている。チャレンジでは参加早々にクラス優勝を成し遂げ非凡なる才能を発揮した一方で、激しいクラッシュも経験するなど、ある意味で波乱に満ちたシーズンを過ごした。また、同年にはSROジャパンカップにスポット参戦も果たしている。そして、このレースでも最高位2 位という結果を手にした。


 今シーズンからは、フェラーリ296GT3と共に、SROジャパンカップへフルエントリーすることを発表。今回は前澤さん、そして今シーズンタッグを組むレーシングドライバーの横溝選手の両名にインタビューをする機会を得た。レースへ参戦するきっかけ、またモータスポーツとビジネスとの結びつきや今後の展開などについてもお聞きした。

「僕にはGT3の方が限界を感じやすいんです」

編集部:「昨シーズンから自らステアリングを握って、ドライバーとしてレースへ参戦し始めましたが、そのきっかはなんだったのでしょうか」

前澤氏:「2023年にレーシングチームを結成し、監督として携わっていた時は自ら走る気なんて全然無かったんです。当時は『凄いなぁ』と思いながらレースに携わっていた感じです。そうしたら『やってみない?』という、周りからの強いお薦めの言葉をもらいまして、それで『やってみるかな』という気持ちになりました」

編集部:「実際にレーシングマシンに乗ってどう感じましたか」

前澤氏:「面白かったですね。走れば走るほど、自身のタイムがコンマ何秒単位で上がっていく。僕は経営者なので、そういう数字を追いかけていく部分は、普段していることに近しいですね。そういった部分もあって、すっかり魅了されてしまった。モータースポーツって、知れば知るほど奥が深いじゃないですか。モータースポーツに携わる前までは、レースの勝ち負けはクルマの性能なんじゃないかと思っていました。特にF1だと毎回上位を争うチームが同じだったりしますよね。でもフェラーリ・チャレンジというワンメイクレースに参戦して、それこそ体重も含めて細かなルールがあることを初めて知りました。そうしたことを知れば知るほど、面白く感じるようになってきました。で、気づいてみたらGT3という車両に乗ることになったという流れですね」

編集部:「前澤さんはハイパーカーといったハイパフォーマンスなクルマにもお乗りになっていますが、GT3というレーシングマシンに乗ってみてどう感じましたか」

前澤氏:「最初は横溝選手が運転する助手席に乗ったんですよ。その時は『こんなに攻めて大丈夫なのか』と思いました。普段自分が乗っているスーパーカーとレーシングカーとでは、まるっきり違う異次元な乗り物なんだと思いましたね。自分で実際に運転してみると、よりその違いがわかりました」

編集部:「GT3のツーリングカーは、かなり速いジャンルのマシンだと思いますが、それほど経験の無いなかでは速さや体に掛かる負担などはどうでしたか」

前澤氏:「速さについては想像の範囲内ではありましたね。スピードに対する恐怖心みたいものはありませんし、体に掛かるGも訓練を経験したせいか、そうした負担にも慣れていたようですね」

 前澤さんはかつて宇宙へ行くための厳しい訓練を経験していたこともあって、心身ともにそうした環境への適応能力は高いのだろう。

編集部:「昨年は激しいクラッシュも経験されましたが、そうしたことで恐怖心みたいなものは芽生えませんでしたか? それこそレースをやめたいと思わなかったのでしょうか」

前澤氏:「僕自身はそうしたダメージはありませんでした。ただひとつのクラッシュで周りに及ぼす影響の大きさに胸を痛めましたね。クラッシュした相手の方やチームスタッフ、メーカーやコース運営の方々など、多くの人が携わっているので、ドライバーの責任は重いな、と。『レースはそういうものだよ』と周りはフォローしてくれましたが、自分が好きでやっていることで、そもそも迷惑をかけるつもりでやっていないので、そういうことが起こることに少し引っかかる部分はあります。乗っていて怖いと思ったことはないのですが、周りに迷惑をかけてしまう怖さがありますね」

 カテゴリーを問わずモータースポーツは、多くの人が携わって成立しているスポーツだ。何か起これば、多くの人達がその問題を解決するために動く。それがポジティブなことであれば良いが、逆のことだと気がかりになる。自身よりも周りに対する気遣いや配慮は、ある意味で経営者としての視点なのだろう。

昨年スポット参戦したSROジャパンカップには、レーシングドライバー兼コーチの横溝直輝選手と共に出場。第1レース4位、第2レース2位に入賞する。

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