“12気筒”という名の奇跡「12チリンドリ」

いい意味で、予想は裏切られた。自動車業界が一斉に電動化へシフトする中、そしてフェラーリ自身もその姿勢を示す中で、まさか自然吸気V 型12 気筒”のみ”を搭載するクーペ&オープンモデルが登場し、しかもその車名に堂々と、イタリア語で”12 気筒”を意味する『ドーディチ・チリンドリ』の名を与えるとは、誰が予想できただろうか。痺れた。真剣に痺れた。フェラーリはそうでなくては!


正式なグローバルローンチに先立って行われるメディア向けのスニークプレビューは、今回もマラネッロ本社内のチェントロスティーレにて開催された。フェラーリのマーケティングとセールスを司るエンリコ・ガリエラは、ニューモデルのコンセプトについて、次のように語り始めた。

「いくら電動化の時代を迎えても、私たちは顧客に選択の自由を提供すべきだと考えています」

「昨今は自動車の電動化に関する話題で賑わっていますが、今日は電動化ではなく、別の話をしましょう。もっとも、電動化が間違っているというつもりありません。なにしろ、2025年には私たちもフル電動車をリリースする見通しですから。ただし、いくら電動化の時代を迎えても、私たちは顧客に選択の自由を提供すべきだと考えています。
そして、私たちのヘリテージにとって、エンジンは常に重要な役割を演じてきました。今日、ここでご紹介するのは、812スーパーファストに置き換わるモデルです」

 続いてガリエラは、フェラーリにとって自然吸気12気筒エンジンがいかに重要かについて言及した。

「1947年に誕生したフェラーリ初のモデル『125S』には自然吸気12気筒エンジンが搭載されていました。当時のレーシングカーは、いずれもパフォーマンスの点で優れる12気筒エンジンを積んでいたのですからこれも当然の判断ですが、12気筒エンジンはきわめて多才で、グランツーリズモにもしばしば搭載されてきました」パフォーマンスと快適性。この相反する要件を高い次元で両立できるのが12気筒エンジンであると、ガリエラは改めて指摘したのだ。


続いて彼は、ニューモデルのポジションを表すチャートを提示した。片側にパフォーマンス、反対側に快適性が示されたこのチャートのなかで、ニューモデルはまさにその中間に位置すると説明された。ただし、これはパフォーマンスと快適性の双方を妥協して、中庸なポジションに甘んじたという意味では決してない。最高のパフォーマンスと最高の快適性。その両方をぜいたくに盛り込んだモデルだからこそ、ニューモデルはチャートの中央に位置するのだとガリエラは説明したのである。

ここで、ニューモデルの名前がついに明かされる。それは、イタリア語で”12気筒”を意味する『12 Cilindri(i ドーディチ・チリンドリ)』だという(以下12チリンドリ)。

「12気筒をトリビュートするのに、これに優る名前はないと考えられたからです」

「ニューモデルの名前を決めるとき、社内の数名に自分の好みを申し立てる機会が与えられます」とガリエラ。「通常、モデル名の候補は4つか5つくらいあって、このうち3つの名前に30%ずつの票が集まることが多いのですが、今回は99%の票が12チリンドリに集中しました。なぜなら、12気筒をトリビュートするのに、これに優る名前はないと考えられたからです」


ここで当然の疑問が生まれる。では、12チリンドリはフェラーリにとって12気筒を積む最後のモデルになるのか? これに対するフェラーリ側の回答は「私たちは将来のモデルについてコメントしません」といういつもどおりのもの。しかし、筆者は12チリンドリ以降もフェラーリの自然吸気12気筒エンジンが生き延びる余地はあると推測。その根拠も、ガリエラ自身が語った言葉にあった。

こちらの閲覧には有料会員へのご登録が必要となります。

有料会員登録がお済みの方は、Fujisan.co.jpにてお申込み頂いたアカウントにてログインをお願いします。

0
今すぐ読む