デイトナに乗った今、12チリンドリに対して想うこと

12チリンドリのプレス向けスニークプレビューがマラネッロで開催されたのが4月半ばのこと。ちょうどその2週間前も私はマラネッロを訪れ、『コルソ・ピロタ・クラシケ』を堪能した。

このプログラムでは308GTを中心に幾種類かのクラシックモデルにフィオラノで触れることができたのだけれど、なかでも最もレアな体験が365GTB4、つまりデイトナだった。ところがクラシケのスタッフ曰く、「デイトナの時もあるけれど実は250GTルッソもあるんだよ」などと言っていた。なんだそっちに乗りたかったじゃないか、と思ったものだけれど、今となってはデイトナ、それも初期のプレクシグラス仕様にメディアをあのタイミングで乗せたこともまた、マラネッロの洒落た演出だったのかもしれないと想像している。単なる偶然かもしれない。帳尻の合うこともまたイタリアらしさだったりするものだ。

フィオラノでビルヌーヴ気分を味わった2週間後。チェントロスティーレで開催されたプレビューにおいてアンベールされた12チリンドリを見たとき、その新しいエレガンスの表現に瞠目した刹那、2週間前に乗った初期型デイトナを思い出した。近寄って、フロントマスクやサイドのディテールを見れば見るほど、デイトナ・オマージュ的な思いが募る。リアフェンダーの膨らみはデイトナというより275GTBに近しいけれども、近代的なライン構成を見るに、デイトナが目指したデザインコンセプト=当時の近未来志向を21世紀の今、踏襲したように思える。

当時275から365へのデザイン的転換は一大事件だった。フェラーリが初めてモダンデザインを模索し始めたから。否、モダンを超えて未来を眺めていた。初期型デイトナのこのマスクデザインは、その象徴でもあったのだ。

そう考えると、812スーパーファストから12チリンドリへの変換もまた、大きな時代の節目を迎えたことを意味しているに違いない。一言でいうと未来志向だが、そこに伝統を織り交ぜることを忘れない。つまりヘリテージとフューチャーの融合こそがエモーショナルなブランドの生きる道であることをマラネッロは宣言したというわけだ。

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